14 APR. 2022
うつわから始まる
4人の老婦人の
小さな物語。
photo: Mie Morimoto
stylist: Miwako Tanaka
text: Akane Watanuki
SCROLL
時を超えて続く
ライラック色の友情。
あなたはこれでしょう。帰国直後に出席した研究室の同窓 会で、旧友がカステラを取り分けた。つやつやと茶色に光 る小さな四角形。マリの好物を覚えていてくれたのだ。私 たちは髪が白くなっても好きなものは変わらないねと屈託 なく笑い合う。手にしたプレートに浮かぶのは丸いライラ ックの色。友情や思い出という花言葉がこれほど合う場面 があるだろうかと、マリは偶然の符合に胸を震わせた。

Satoko Sai + Tomoko Kurahara
(サトコサイ・プラス・トモコクラハラ)
2002年より共同制作を開始。
陶器を媒体に、風景・場所・ 記憶などをキーワードに版画や写真などの要素を取り入れた表現を 探究している。
型や転写など量産の技法を使いながら、 全ての工程を手で行うことで生まれるゆらぎやかすれなどの表情を 特徴とした器を作っているほか、
アートプロジェクトも継続して行なっている。