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魔法のふとん紀行

《 連載 》魔法のふとん紀行 8月 (最終回)「恋しいふとん」

¥37,400 税込

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商品詳細

商品コード 7902CU018192

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8月のおはなし(最終回)
恋しいふとん


甘い香りで目を覚ます。
これは外国の匂いだ。私は自分の家のふとんの中にいる。甘い香りは最後の1週間滞在した、知り合いのまた知り合いの家で使われていた洗剤の匂い。私はあまり香りのある洗剤が好きではないけれど、ちょっと旅の残り香を持って帰りたくて、最後に自分のありとあらゆる持ち物を洗濯させてもらったのだ。ふとんカバーもシーツもその香りを纏っている。使うかどうかは分からないけれど、実は同じ洗剤を買ってきてもある。またその匂いが恋しくなったら、その洗剤で洗濯しようと思っている。

その最後の1週間滞在したアパートの住人、知り合いのまた知り合いはアーティストで、ちょくちょく旅をしている。旅をしている間、自分のアパートを貸しているよ、と知り合いが教えてくれて、ぜひ泊まりたいとお願いした。私は彼女の作品がとても好きで、その世界観を少し味わうことができそうと思ったのだ。彼女は陶芸をしたり、写真を撮ったり、絵を描いたり、様々な方法で表現をしている人。部屋には作品はもちろん、彼女のセンスで選ばれたものたちが散らばっていた。本だって、クッションだって、照明だって、食器だって、洗剤もそうだ。そこで過ごすあいだ、彼女の頭の中に滞在させてもらっているような気分だった。アパートある住人専用の小さな中庭には、ベンチとテーブルがあって、毎日必ずそこにいる時間を作った。朝、本を読んだり、夕方はビールを飲んだりした。なんだかそのアパートにいると、創作意欲が湧いて、私もいろいろ作りたくなっていた。

街に出かけて、ちょっと好きな感じの洋服屋を見つけて入る。あんまり被らないのになぜか帽子を買った。旅にはそういうことがたまにある。感じの良い店員さんだったから、この辺りのあらゆるジャンルのオススメのお店と手芸屋を聞いた。私は自分の家用のふとんカバーと枕カバー、シーツを縫いたくなったのだ。それを自分の旅のお土産にしようと決めた。

教えてもらった手芸屋さんは予想外に大きかった。倉庫のように、とまではいかないけれど、地方のデパートのワンフロアが全部、くらいの広さだ。私は花柄を探していた。おばあちゃんのパジャマにありそうな、ちょっと野暮ったいくらいの花模様だ。そう考えていたら、そこの花柄ゾーンはそんな柄ばっかりで目移りする。その中にハッと思うものを見つけた。今までの旅の間に出会ったモチーフがそっと入っているような模様だ。マーガレット、陶器の小物入れに描かれたようなお花、ピンク色の春の知らせ、ライラック色のギザギザなど。他の人が見たらそうかな?と思うかもしれないけれど、私には思い出が詰まっている柄に見えた。生地とミシン糸を購入し、アパートに戻ると、早速ミシンを借りてダダダっと縫った。大きいからどれくらい時間がかかるかなと思っていたけれど、その日のうちになんとか完成。夕方には間に合わず、夜中のビールで完成を小さく祝った。翌朝、そのふとんカバーたちを洗濯して干す。青空の下、はためく洗濯物の風景が、洗剤のコマーシャルみたいだなと思った。

そうして私の旅は一応、一度終わった。家の更新とか事務的なこともあるし。そんなの今の時代ならば、そこにいなくても遠隔操作でできることかもしれないけれど、なんとなく1年間と決めていたのだ。
それに,もうすぐ1年という頃にちょうど私は自分のふとんが恋しくなってきていたのだった。ふとんカバーを作ったのは、そんな気持ちのせいなのかもしれない。

帰ってすぐに、ふとんと枕にカバーをかけて干した。一日干して、干したてのふとんにざぶんと飛び込んだ。
そのままいつの間にか眠っていた。(そして、最初に戻る。)

  ※撮影画像は、光の当たり具合やモニターの環境により色味が違って見える場合があります。
あらかじめご了承ください。
※サンプル商品は、実際の商品と仕様、加工、サイズが若干異なる場合がございます。
※取り扱いの注意については取り扱い表示をよくご確認の上、着用をお願いいたします。

知っておいてほしいこと

こちらは、連載作品のため価格は実際に販売する価格と異なります。 仮の価格を表示しております。 サイズや質感も想像していただきたいため、表記しておりません。
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