マルチ99

魔法のふとん紀行

《連載》魔法のふとん紀行 2月「 ピンク色の目 春の知らせ 」

¥9,999,999 税込

カラー・サイズを選ぶ

サイズ

サイズガイド

-

商品詳細

商品コード 7902CU021191

  • twitter
  • facebook
  • line
  • mail

2月のおはなし
ピンク色の目 春の知らせ



本当に毎日寒い。冷たい風が強く吹いていて、完全防備でいても、どうしても晒されてしまう頬は感覚がなくなっている。少しでも暖かくなりたくて、歩く代わりにスキップしてみたりしている。シーフードが食べたくなって海に近い街にやって来たのに、寒さに耐えきれなくなってしまった。少しフェリーに乗って行った所に、気候の穏やかな島があると聞いたので、移動することにした。

フェリーで1時間ほど。島に着くと風は柔らかくなっていて、風も日差しも暖かい。春を感じるくらいだ。港から遠くに広がって見える風景は薄茶色の草原で、太陽を受けてキラキラと光っている。もっと近くにいたら、サワサワと気持ちの良い音が聞こえてきそうだ。その奥には山が見えて、暖かくなったら何かの実がなりそうな低い木が植わっている。島には郵便局を兼ねた小さなお店が一つと、宿が一つ、民家が数件あるそう。
ただ寒い場所から逃げ出すことが目的で移動して来たけれど、気候のおかげで、一気に気持ちが明るくなった。海が近いから、宿できっと美味しいシーフードも食べられるでしょう。


荷物を宿に置いたら、さっき見た薄茶色の草原に行くと決めていた。草原で、郵便局の売店で買ったサンドイッチを食べて、眠くなって来たら昼寝をするぞ、とも。そのとおりにサンドイッチのお昼を済ませて、草原の中にシートを敷いて、ゴロンと寝転ぶ。本を読みながらうとうとしていたら、ふと、目線の先、草の中にピンク色のものを見つけた。
近づくと、小指の爪くらいの大きさの、小さな花のようだった。キャラメルの包み紙よりももっと薄くて、カサカサに乾燥している。触るとぽとりと細い茎が折れて花の部分だけ落ちてしまう。風が吹くと、花はどんどん茎から離れて行って、また風が吹くと、ふわっと沢山のピンクが舞った。私はそのピンクの花を夢中になって集めていた。海辺で桜貝拾いをした時みたいに、時が経つのを忘れてピンクを追いかけた。
広い薄茶色の風景の中から、小さなピンクを見つけるのは最初は難しかったけれど、どんどん目が慣れて、ピンク色に敏感になっていった。小さなおもちゃの鉄砲玉とかプラスチックの破片とか、花とは違うピンクも見つけてしまうくらいだった。集めた花が手のひらから溢れてきたので、サンドイッチが入っていたビニール袋に入れ替えて、袋いっぱいになるまでと決めて集めた。


宿に帰って、集めた花をテーブルに広げていたら、一言でピンクといっても、いろんな色があることが分かった。透明に近いピンクから、カシスのシャーベットみたいな色まで。いつの間にか色のグラデーションに並べていた。宿のおばさんが、覗き込んで言った。
「春の知らせを集めたのね。それはね、花ではなくて、秋に実が弾けた後の殻なの。暖かくなってくるとなぜだかピンク色に変わっていくのよ。それが綿毛みたいにふんわり飛ぶと、もうすぐ春が来るのね。って思うの。」
なんとなくグラデーションに並べた春の知らせに糸を通して、ネックレスにした。それを小さな箱に詰めて、母に送ることにした。
この遠い島から母の住む街に届くまで、どれくらいかかるだろう。ネックレスの到着が先か、本物の春が先か、その結果が楽しみだ。

  ※撮影画像は、光の当たり具合やモニターの環境により色味が違って見える場合があります。
あらかじめご了承ください。
※サンプル商品は、実際の商品と仕様、加工、サイズが若干異なる場合がございます。
※取り扱いの注意については取り扱い表示をよくご確認の上、着用をお願いいたします。

知っておいてほしいこと

こちらは、連載作品のため価格は実際に販売する価格と異なります。 仮の価格を表示しております。 サイズや質感も想像していただきたいため、表記しておりません。
カラー サイズ 在庫 購入 お気に入り
マルチ99