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魔法のふとん紀行

《連載》魔法のふとん紀行 5月「 ライラック・タウン 」

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商品詳細

商品コード 7902CU025191

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5月のおはなし 
ライラック・タウン


日常生活の中で、やってみたくてもなかなかできなかったのは、昼間の電車の中で眠りたいだけ眠ることだ。座席に座れてしまうと必ずうとうとする。そして気持ちがいいなあという時に目的の駅に到着してしまうものだ。空いている車内に、陽がちょうど良い感じに差していて、ちょっとぽかぽかしていて、天国のようで、できればこのままずっと乗っていたいと思ったことがしばしばあったのだ。

そのやりたかったことを今日ついに実行することにした。ただ、知らない街でそれを単純にやってしまうのは危険でもあるので、穏やかな小さな町の路面電車を選んだ。この街には路面電車が4ルートあり、どれも終点に到着したらそのまま同じ道を引き返すだけなので、目が覚めて知らない場所にいたとしても、わかる場所まで乗っていれば迷子にはならないはず。

良いお天気で良かった。理想的だ。お昼を食べた後、リュックに水と甘いものを少しいれて、路面電車に飛び乗った。誰にも迷惑をかけたくないので一人席に座り、最初は外の景色を眺める。並木道が木漏れ日でキラキラしている。カフェの外の席でお茶を飲む人、小さな公園の芝生で日光浴する人、犬を連れて散歩する人、ジョギングする人、みんなそれぞれの時間を楽しんでいるように見える。それだけで、なんだか幸せな気分になり、その幸福感で眠気がやってきた。いいぞいいぞ。希望通り、私はうとうととお昼寝タイムに入って行った。周囲の音や人の気配、電車の揺れが心地よい。はじめはそんなことを感じていたけれど、いつの間にか深い眠りに入っていた。

それから数時間が経ったと思う、はっと突然目が覚めると、陽が夕方の色に変わってきていた。車内には私しかいなかった。ちょうど終点だったようで、しばらく電車は停まっているようだ。ずっと座っていたので、お尻がペタンコになりそう。体を動かしたくて、知らない場所だけど、一度降りることにする。

電車から降り立つと一度ぐんと伸びをして、なんとなく気持ちが誘われるまま歩いてみた。するとこの辺りの建物がちょっと面白いことに気がついた。全ての建物は薄い紫色をしていて、壁がデコラティブ。幾何学模様のようなレリーフになっている。多分真新しいものでもないけれど、すごく古いものでもない気がする。この辺りの伝統というよりは、このデザインが好きな人たちが集まって暮らしているような不思議な集落という感じだ。そのレリーフがきれいで、珍しく写真をたくさん撮る。どこまでも続くその紫色の道を進んでいたら、だんだんと空の色が変わってきた。美味しそうなオレンジ色からピンク、そして紫色になった。そうすると、街と空の境目がなくなってしまって全てが同じ薄紫色になった。自分も染まってしまいそう。むしろ紫色の世界に溶けてしまって、心臓だけが浮いているみたいだ。急に怖くなって、元来た道を引き返した。電車に乗ってもしばらく目がおかしかったけど、少し居眠りをして目覚めたら元に戻っていた。

次の日「昨日のあの場所はなんだったのだろう」と思い出していた。ふと、ハンガーラックにかかっている、昨日着ていたワンピースを見て驚いた。白いワンピースだったはずが薄紫色に変わっていたのだ。寒気がして、腕まくりをしたり、全身を鏡に写してすぐさま確認する。よかった。染まっているのは洋服だけで、体はいつもの肌色だった。

 
※撮影画像は、光の当たり具合やモニターの環境により色味が違って見える場合があります。
あらかじめご了承ください。
※サンプル商品は、実際の商品と仕様、加工、サイズが若干異なる場合がございます。
※取り扱いの注意については取り扱い表示をよくご確認の上、着用をお願いいたします。

知っておいてほしいこと

こちらは、連載作品のため価格は実際に販売する価格と異なります。
仮の価格を表示しております。
サイズや質感も想像していただきたいため、表記しておりません。
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